もうそばにいるのはやめました。



使用人ひとりひとりにお中元や年賀はがきを送ったり、お茶を飲んだり世間話をしたり……。


立場はあれど、仲むつまじく交流していた。



使用人の実家にご挨拶に行ったことだってある。



ハルくんと初めて会ったのも、その挨拶のときだった。



元々ハルくんの叔父さんがわたしの家に仕えていた。
お父さんの専属執事だった。


ハルくんの叔父さんの家――八文字家に初めて訪問したのは、わたしが小学生になったばかりの初夏。



レースとパールをあしらったレモン色のドレス。


お気に入りのドレスを着こなして、お父さんと一緒に叔父さんに挨拶した。




『お嬢さま、ご丁寧にありがとうございます。そのドレスもお似合いですね』


『えへへ~』


『そういえば、寧音と同年代のおいがいるんだったか』


『覚えてくださっていたんですか。ええ、そうです。あそこにいるのがわたしのおいの晴澄といいます。年はお嬢さまよりひとつ下になります』




叔父さんがハルくんを呼ぶ。

ハルくんは元気よく走ってきた。


……と思ったら派手に転んだ。



『だいじょうぶ?』



手を差し伸べてあげたら、泣きそうだったハルくんの表情がゆるやかに咲いていった。