「……うん、2人とも正解だ」


「さっすが学年トップの2人だな~」


「彩希うっさい」



勉強が得意なのは、お嬢さまだったときの英才教育のおかげ。


でもわたしより円のほうが頭がいい。

同居してたとき、円と勉強会したこともあった。



『円、この問題って……』

『あー、俺もそこ悩んでた』

『このXってこうなる?それとも引っかけ?』

『俺も最初そうなったけど、これにかけたら……』

『わあ!すごい!円、天才!?』



円の教え方が好きだった。


円との勉強が大好きだった。



わたしが笑うとつられて笑みがこぼれる円を、できることならずっとそばで見ていたかった。



「問題が解けるからって授業中上の空になるなよ」


「はい、すみませんでした!」



反省してます!

授業集中します!


ペコペコしながら謝り、席に戻る。



一歩踏み出したとたん、視界がぐらついた。



「……っ、」



あれ?どうしたんだろう、わたし。


よろけた体に力を入れようにも全然力が入らない。



やばい。倒れる……!



「寧音!」


「……ま、どか……?」



お腹あたりに力がこもる。


……わたしの力じゃない。

円のだ。