もうそばにいるのはやめました。



円の演奏!?



「それは聴きたい!!」


「……お前、今いらねぇって」



あ、久し振りに円に「お前」って呼ばれた気がする。



恋人になってからは「寧音」ってよく呼ばれる。


今まではレアだったのにそれが通常になったから、わたしも「円!」って大声で応えたくなる。



「バイオリンは別!円の演奏してるとこ間近で見たことないんだもん!」



同居中、円は自分の部屋にこもって弾いてたし。


自称一番のファンとしては、一度はちゃんと聴きたい!



「結局文化祭でも聴けなかったし……」



あれはわたしのせいでもあるんだけどさ。

今日誕生日じゃないんだけどさ。


そばで聴いてみたいな。



「……しょうがねぇな」



ポン、と。

頭の上に乗っかった、骨ばった手。


次いでグググッと圧がきたかと思ったら、円は立ち上がっていた。



「文化祭頑張ったほうび、ってことでいいか?」


「弾いてくれるの!?」


「少しだけだからな」



ただのわがままだったのに……。


あぁ、甘やかされてるなぁ。

今日は一段と甘い。


愛されてるのが言葉にしなくても伝わってくる。



胸の内側まで熱くなって、どろどろにとろけちゃいそう。