『そんなことじゃ……!』
『こっち来い』
『え!?』
返事も聞かずに手を引かれた。
つれられた先は、円の部屋。
そのとき初めて踏み入れたその部屋の白い壁には、「HAPPY BIRTHDAY」の文字が飾られていた。
色とりどりの風船。
卓上のホールのケーキ。
ケーキの上にはちゃんとロウソクが17本あった。
思わぬサプライズに涙が出た。
『聞いてないよ……っ』
『言ったらサプライズになんねぇだろ』
『こんなのずるい……泣いちゃう……』
『もう泣いてんじゃん』
ブサイクな泣き顔を、円はほがらかに見つめていた。
『誕生日おめでと』
『っ、……あ、ありがとうぅぅ……!』
『金持ちのときと比べもんになんねぇだろうけど我慢して』
『そんなことない!すごく、すごく、うれしい!!』
『……なら、よかった』
シックな部屋に似合わないカラフルないろどりに囲まれながら、用意してくれたケーキを円と一緒に食べた。
円の手作りのチョコレートケーキ。
号泣しすぎて、正直味はよくわからなかった。
最高の誕生日だった。
「本当はあんときなにかプレゼントもしようかと思ったんだけど、さすがに準備が間に合わなくてさ」
「プレゼントなんて……!あのサプライズで充分だよ!プレゼントまでもらってたら発狂してたよきっと」
「発狂は困るな」
「でしょ?」
「……でも、バイオリンをちょっと弾くくらいしてやろうかって、あんときは考えてた。やらなかったけど」



