現に、もし春木君と美桜が付き合うことになっても、私は春木君を諦めることはできないと思うから。
「……私は、アイツが秋保を選ばなかったのが気に入らなかった」
それは考えていなかった。
「えっと……なんで?」
「だって、秋保可愛いじゃん。それなのに、秋保を適当に扱って。もう、それだけは今でも許せない」
あの人と美桜の間になにがあったのかはわからないけど、美桜はかなり怒っているみたいだ。
「私、可愛いかなあ……」
最近春木君とか清花ちゃんたちに可愛いって言われるけど、いまいち響いていないときがあったりする。
「可愛い」
美桜は断言した。
でも不思議なことに、美桜にだけは言われたくないと思った。
「私は美桜のほうが可愛いと思うけど。運動もできるし、頭もいいし、頼りにされてるし。私なんかより全然人気者だもん」
「人気かどうかはわからないけど……勉強とか運動は、秋保に自慢のお姉ちゃんだって思われたくて頑張ってただけだよ」
それで頑張れるのがすごいことなのだと、美桜は思っていないらしい。
「上の出来がよかったら、下は惨めになるだけだよ」
ずっと黙って聞いているだけだと思っていたのに、翠君が口を開いた。



