名前を呼んで、好きって言って


「私……美桜とまた、昔みたいに仲良くなりたいって、思ってて」


勇気を振り絞って言うけど、美桜はそれがどうした、というような顔をしている。


あのことを気にしていない美桜からしてみれば、そうなるだろう。


でも私は無理だ。
あれをなかったことにはできない。


「もう終わったことだってわかってるんだけど、その……私のせいで、美桜たちの幸せを壊してしまって、ごめんなさい」


私は深く頭を下げる。


言えた。
やっと、ちゃんと謝ることができた。


「どうして秋保が謝るの?」


美桜の声が震えていた。


顔を上げると、美桜は涙目だ。


「謝るのは、私のほうだよ。秋保の気持ちに気付かないで、告白されたことが嬉しくてちゃんと好きでもないのに付き合ったりしたから、あんなことになったんだから」


あの日美桜が言おうとしていたのは、このことだったのか。


「……今だから思うんだけど、私、あの人のこと、そこまで好きじゃなかったと思う」
「どうしてそう思うの?」
「だって、美桜が選ばれたってわかって、諦めることができたから」


すぐに、とはいかなかった。
でも、諦めようとすることができた。


清花ちゃんが教えてくれたことに合わせてみると、それはつまり、好きではなかったということだろう。