「今日は、その……美桜に、話があって」
「え、私に? なになに?」
美桜はスキップでもするのかというくらい軽い足取りで、私が座っているソファの隣に座った。
話そうって決めたのに。
春木君と頑張るって約束したのに。
美桜本人を前にすると、何をどう言えばいいのかわからない。
頭が真っ白になる。
「あ、わかった。好きな人でもできた?」
私たちの間で恋愛の話をするとは……
勇者というより、美桜があのことを気にしていない証拠だった。
多分、美桜は気にしていないから、こうして私に笑顔で話しかけてくれているんだろう。
いつまでも、私だけがあのことを引きずっている。
「秋保?」
「……ごめん、また今度話す」
そして私は自分の部屋に戻った。
二人きりで話すことが一番だって、わかっている。
でも、あの状態だといつまで経っても話は進まない。
これは誰か事情を知っている人がいたほうがよさそうだ。
この場合、誰がいいだろう。
清花ちゃん?
夏恋ちゃん?
麗羅ちゃん?
春木君?
翠君?
柊斗さん……は、私も美桜も話し合いどころではなくなるから、却下だ。
清花ちゃんたち三人には美桜と気まずくなっていることまでは話していないから、お願いできない。



