名前を呼んで、好きって言って


「お。気は済んだか?」


立花先生は欠伸をしながら言った。


どうやらわざと口を挟まなかったらしい。
みんなが静まるのを待っていたみたいだ。


「……で、立花くん。この子の席は?」
「俺の隣!」


 翠君は先生に聞いたのに、春木君が一番に手を挙げた。


「翔和は黙ってて」


保健室で初めて会ったときは、翠君が適当な扱いをされていたけど、今は逆転している。


そういえば、京峰先生もこんな感じだったっけ。
やっぱり兄弟だな。


「僕的には、柊斗の隣が一番だと思うんだけど。どう?」
「え……と……」


春木君が隣だったら、きっとずっと見られて、落ち着かないだろう。
そして柊斗さんが隣だと……うん、ずっと緊張しっぱなしになる。


「翠君、は……?」
「え、僕? 別にいいけど……そうなったら柊斗が一つ後ろに下がって、ずっと後ろから見守られることになるけど、いいの?」


なんて究極な選択だろう。


柊斗さんが隣か、後ろか。


……後ろから見られるほうが怖い気がする。


「……柊斗さんの隣で」


そう答えた瞬間、春木君の泣きそうな表情が見えた。


これは仕方のないことだから、少しだけ、我慢してください。