名前を呼んで、好きって言って


翔和君の背に手を回そうとすると、わざとらしい咳払いが聞こえてきた。
美桜だ。


翔和君から離れようとするけど、翔和君は放してくれない。


「私はまだ、認めてないからね。今回みたいなことがまた起きたら、すぐに別れること。これが最低条件」
「美桜……!」


翔和君は私から離れ、美桜の手を握った。


「ありがとう、美桜。もう絶対に秋保を傷付けたりしないから。見守ってて」


美桜は翔和君の純粋さに驚いているようだった。
翔和君の手から逃げる。


「じゃあ秋保。私たち外で待ってるから。三十分で出てきてね」


そして二人きりにしてくれた。


しかし改めて二人にされても、何を話せばいいのやら。


翔和君はずっとにこにこしてるし。
会話なんてなくてもいいという感じだし。


沈黙に耐えられないのは私だけか。


「……そうだ。翔和君、私が泣いてるところ見て、俺のために泣いてくれてる、みたいなこと言ってたよね? あれ、どういうことだったの?」


私は翔和君の前では泣いたことはないはずだ。
それなのに、翔和君は私の涙を見たことがあるような言い方をしていたことが気になっていたんだった。


「俺ね、一年くらい前、街で泣いてる秋保を見かけたことがあるんだ」