1日だけ、キミの彼女。

「……あれ?」


5時間目の化学の授業が終わって理科室から教室に戻る途中、七海ちゃんと一緒に廊下を歩いていたら、ふとあることに気が付いてその場に立ち止まった。


「ウソッ。ここに付けてたヘアピンがない! お花の付いたヘアピンなんだけど……」


そう。朝からずっとサイドの髪につけていたヘアピンを、どこかで落としてしまったみたい。


さっき、5時間目の授業が始まるまではあったのに。


すると、七海ちゃんが心配そうに言う。


「あ、ほんとだ。結奈確かにつけてたよね? もしかして、理科室で落としたんじゃない?」


「そうかもしれない。私、探してくる!」


「わかった。じゃあ教科書持っていってあげるよ」


「ありがとう」


私は優しい七海ちゃんに甘えて教科書一式を彼女に手渡すと、そのまま廊下を走って理科室へと向かった。


するとその途中、向こう側から璃久くんが歩いてくるのが見えて。


「結奈っ」


急に大声で呼び止められ、ハッとして足を止める。


なんだろう、と思って璃久くんを見上げると、彼は手に持っていた何かをこちらに差し出して。


「なぁ、これ、結奈のヘアピンじゃない?」