「…何食べるか迷っているのかな?」


メニューと睨めっこしていると、
彼が話しかけてきた。


「万咲さんは、何食べるんですか?」


「僕は、オムライスにしたよ。
 ここのオムライスは絶品なんだ」


「そうなんですね。
 何度か来たことあるんですか?」


彼は何と答えるのだろうか。


「一度、部下と来たことがあります。
 その部下に薦められて食べたら
 虜になってしまって」


メニューとのオムライスを指差しながら、
嬉しそうに言った。

その表情に罪悪感はなかった。


「…私もその部下の方おすすめの、
 オムライスにします」


「注文しますね」


そう言って、店員呼び出しボタンを押した。

最後の晩餐の、始まりを告げる音が
鳴り響いた。