「そうやって、からかわないでよ……っ」
「からかってないよ」
「っ、」
「雨野のそういう顔、学校じゃ見たことないし?」
ああ……もう、ダメだ。
葵くんのせいじゃん。
葵くんが、変なこと言うからいけないんだ。
隣の葵くんから逃げるように身体を戻そうとしたけれど。
それよりも早く、私の文庫本を覗き込むようにして、耳元にその整った顔を寄せてきた。
「さっきの、雨野の言われたい相手って、“ 八雲先生 ”とか?」
「なっ、なんで八雲先生が出てくるの……っ」
言われるまでは頭の中に八雲先生なんて浮かんできてもなかったのに。
「アイツじゃないといいなって俺が思ったから」
……ボソッと呟いた葵くん。



