【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?



反射的にざわつく廊下へと顔を向けたけれど、慌ただしく通り過ぎる生徒達の姿しかなかった。


こちらを見ていた人物は見当たらない。



今の……私の、気のせい?

ものすごく鋭い視線だった。



ルール通り……ここは、葵くんに真っ先に報告、と思ったのだけど……



「───さぁ、始めようか」



教室の前の扉が開いて、八雲先生がすっ、と入ってくる。


乱れのない漆黒の髪が微かに揺れた。



うぅ……タイミング逃した。

葵くんへの報告は休み時間にしよう。


それから私も急いで教科書を開いた。