【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?



私が名前を言った途端クラスのみんなは「アマゾラちゃんって呼ぶ?」「うわ、雨女かぁ。残念」と冗談交じりで笑っていて。


尊敬している人という項目で私は警察官のお父さん、と発言した。


すると今度は「犯人と争ったことある!?」「どんな事件を解決したの?」とクラスがざわついた。



私の中で、あの事件が起きた当時の記憶が開いて……。



「そういう顔って言われても、別に私は……」


「泣きそうな顔してる」


「……し、してるわけ、ないでしょ」



精一杯、否定してみせたけれど。


8年前に起きたことを思い出すと、本当は苦しかった。


今だって身体の奥底からこみ上げてくるものと必死に戦ってる。



「俺の前では甘えてって言ったよね?」


「だから、甘えるなんて意味わかんないよ……」



そんなこと言われても、甘えるってなに?


……私には、全然わからないんだけど。



「泣いてもいいよってこと。苦しいなら、我慢すんな」


「っ、」



俯く私の頭上から葵くんの優しい声が降ってくる。