【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?



「だ、誰かが……っ、」


「しーっ」



誰かがいる……と声をあげそうになった私の唇を葵くんが人差し指で塞いだ。



緊迫した空気に一瞬で包まれる。



「ここにいて?」



中に侵入しているであろう人物に聞こえない声で葵くんが言った。


私はコクコクと葵くんの目を見て必死に頷いた。



足音をたてないように慎重に中へと進んでいく。



そんな葵くんの後ろ姿を見送りながら、風谷くんとの会話や妹の美雨ちゃんの顔が浮かんできた。



いくら有段者とはいえ相手は大柄な男かもしれないし、刃物を持って潜んでいる可能性だってある。


もし……葵くんになにかあったら。


そう思った時には身体は勝手に動いて、葵くんの後ろまで向かっていた。