「あ。あの子のお父さん警察官なんだって。でも裏ではかなり黒いらしいよ?」
「ちょ、なにそれ。詳しく」
あちこちから聞こえる声に、足取りは鉛のように重くなる。
教室まであと少し、というところで、今度は同じ学年の男子があからさまに嫌な顔をして私を見やる。
「……うっわ。アイツ、昨日の今日でよく学校来たよな」
「それな?つか、気持ち悪くね?」
「てか無理。父親が、人殺───」
……ああ、もう二度と聞きたくない言葉が、また降ってくるのだろうと思ったその時。
「……っ!?」
私の世界から一瞬、音が消えた。
ポスッと私の耳を塞いでいる誰かの手。
足元から視線を上げれば、彼らを酷く冷たい瞳で見ている葵くんの姿があった。



