【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?



幸いにも病院に運んだその女性の命に別状はなく、軽い捻挫や打撲で済んだそうだ。



けれど、病院から再び走って事故現場へと戻ると───



「間に合わなかった。女の子は、既に……息を引き取ったあとだった……」



途切れ途切れに、お父さんは言った。


救急車は到着していたが、隊員のひとりがお父さんの顔を見て首を横に振った……と。


巻き込まれた女子高生は、冷たい雨に打たれたまま、息絶えた。



「……っ、」



拳を震わせ、目には涙を溜めたお父さんが、苦しそうな顔で俯いた。



「助けられなかった……」



悔しさを含んだ悲しい声が、宙を舞う。



私はお父さんの悲しみにどう触れたらいいのかわからずに、泣くことしか出来なかった。