【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?



* * *


────夢を見た。


その場面では激しい雨が降っていて、辺りは薄暗くなりかけている。



「お父さん、大丈夫かな……」



その夢の中で、泣きそうになっている私は、まだ8歳だった。



断片的な記憶だけが流れていく嫌な夢。


前が見えないほどの叩きつけるような豪雨。

近所に鳴り響くサイレンの音。

電信柱に突っ込んでぐちゃぐちゃに潰れた車。



────雨に流れる、血。



騒ぎのあとも絶え間なく溢れる人だかり。


喧騒……聞こえる声。



────“もう、死んでるんじゃない?”

────“めっちゃ近所なんだけど”

────“警察官のくせに?嘘でしょ?”



好奇の目に晒されるお父さんの背中が震えている。


その光景を最後に、私は目を覚まして飛び起きた。