そんな私を見て葵くんは呆れたみたいに笑った。



「最初から素直に甘えなよ」


「だって……っ」


「いいの?俺がこんなとこで雨野に欲情しても」


「よ、欲情………!?」



……葵くんのバカっ。


この前は欲情しないって言ってたくせに。


私は悪態つきながらも慌てて葵くんのカーディガンをワイシャツの上から羽織った。


葵くんの匂いがして、ドキドキする。


ぶかぶかで大きいことが、なんだか嬉しくなった。



「栄一さんに逮捕されるとかごめんだから」


「も、もう……!!」



準備室にいた時は、お父さんに対する心無い出来事のせいで苦しかったのに。



……葵くんの隣で、今こうして笑えている。



「葵くん、ありがと……」



私は隣を歩く葵くんに小さくお礼を言った。