春から続いたあれこれに片が付いたその夜、ハルは体調を崩した。

 張りつめていた緊張が解けて、疲れがどっと出たようで、夜中に発作を起こして救急搬送。
 入院後も不整脈がなかなか治まらず、本当に心配した。

 熱ぐらいなら家でも療養できるけど、不整脈だとそうはいかない。何かあったら即命に関わるから。

 そんな訳で、一週間ほど入院し、昨日、ようやく退院してきたところだ。

「気分はどう?」

 不整脈こそ治まったけど、決して万全の体調ではない。それでも、出席日数を心配して、早めの退院を希望したハル。

 大学からは事情を考慮して、最大限の配慮をするからとは言われているけど、……その言葉にどっぷり甘えられたら、多分、それはもうハルじゃないんだろうな。

「ん。……大丈夫」

 ふわあっと小さなあくびを一つして、ハルはにこっと笑顔を見せた。

「どうする? ここに通す?」

 見舞いに来たいと言う海堂たちを受け入れると決めたのはハルだった。

「……起きる」

 そう言って、ハルは気だるげに身体を起こした。ハルの身体を支えながら、

「しんどかったら、寝てていいんだよ?」

 と声をかけるけど、ハルは小さく左右に首を振った。

「大丈夫」

 そして、もう一度、小さなあくびをした。

「今、何時?」

「二時、三分前」

「え? じゃあもう、来ちゃう?」

 ハルが驚いたように目を見開く。

「そろそろかな」

「ごめんね」

 そう言いながら、ハルはベッドから足を下ろした。