恋歌はクリスマスを彼と過ごしたい

「……本当に復讐したいの?」

 恋歌の説明を聞いてもひとみは信じられないといったふうであった。それどころか心なしか残念そうにも思える。

「はい」

 恋歌は即答する。

 自分の本心を言うのは正直必要ではなかったかもしれないがおかしな誤解をされるよりはましだろうと判じた。

 ひとみが少々戸惑ったまま質問する。

「中野さんって、前にもこういうことしたの?」
「やだなぁ、する訳ないじゃないですか」

 そもそも恋歌にそっけなくした男はいなかった。

 恋歌にとって男はちやほやしてくれる存在であったのだ。

 恋歌は言う。

「村田さんみたいなのは初めてですね」
「……」

 はあ、とひとみがため息をつく。

 ものすごく困ったような顔をした。

「ねえ、中野さん」
「何ですか」
「そんな理由で村田さんに近づくのはやめなさい」
「やめませんよ」
「村田さんのことそんなに嫌い?」
「うーん」

 ここで恋歌は返答に窮する。

 嫌いかと問われてもイエスとはならなかった。

 村田にもいいところはある。

 そっけないけれどたまに見せる優しさがたまらなく心地よいのだ。

 ……嫌いならそんなふうに思えないよね。

「えっと、別に嫌いとかじゃないんです。そうですね、復讐というのは強すぎる言い方だったかもしれません。リベンジってところでしょうか」
「どっちも変わらないんだけど」
「うーむ」

 恋歌としてはソフトな言い回しなのだがひとみにはお気に召さないらしい。