恋歌はクリスマスを彼と過ごしたい

 恋歌はそっと彼に告げた。

「『まじかるチヨリン』(アニメのタイトル)のクリスマスオールナイトイベントのチケットがあるんですけど」

 ピタリ、と村田の動きが止まる。

「良かったら一緒に行きませんか?」
「……」

 村田が恋歌に振り向いた。びっくりしたような顔に恋歌は作戦の成功を確信する。

 と、同時に意地悪もしたくなる。

「あ、でも無理ですよね。年末だしやることいっぱいあって遊んでられないですよね」
「いや」

 村田が一度言葉を切り、恋歌の目を見つめながら続けた。

「そのイベントって開演時間遅いよね。それまでには一段落つけるから」

 恋歌は「よっしゃあーっ!」と叫びたい衝動を抑え、村田の腕に身体を押しつける。

 自分の中でとくんとくんと鼓動が激しくなっていくけれど、それが彼に知られてしまいそうだけど構わなかった。

 そんなものこの勝利に比べたら些細なことだ。