恋歌はクリスマスを彼と過ごしたい

「あ、あなたこそどうなの・ 村田さんと予定は組めたの?」
「えー、そこ突いてくるんですか」

 ああもう、放っておいてくれないかな。

 恋歌は表に出さぬよう腐心しつつクリぼっちな先輩に毒づく。

 こっちはあんたと違って自分から村田以外のお誘いを断っているんだからね。

 同類じゃないのよ。

「村田さんは仕事で遅くなりますけど、私、、待ちますんで」
「……ってことは二人でどこか行くの?」
「えっと、たぶんそうなります」

 そう。

 確定ではないけれど村田なら必ず食いつくはず。

 やや羨ましそうにひとみが見つめてくる。若干さっきよりも目つきがきつくなっているふうにも思えるがそこはスルーした。

 それよりもちょい悪戯心がわいてきて、恋歌はひとみに質問する。

「彼氏とのクリスマスパーティーにはどんな料理を出すんですか?」
「そ、それは……」

 ひとみの目が泳ぐ。

 うわぁ、何この露骨な動揺。

「ローストチキンとケーキは外せないでしょ。あと、彼って唐揚げとか好きだからそれも作らないと。それに……」

 と、ひとみが料理名を並べていく。恋歌はそれらを聞き流した。ひとみのうろたえる姿は面白いが彼女の妄想にいつまでも付き合うつもりはない。

 ひとみの妄言が終わったあたりで恋歌は言った。

「わあ、さすが先輩。すごいです。それ全部手作りなんですよね。私が彼氏なら惚れ直しちゃうなぁ」
「そ、そう?」

 まんざらでもない様子でひとみが照れる。

「……」

 ま、どうせ作れたところで食べてくれる相手がいないんじゃ意味ないよね。