恋歌はクリスマスを彼と過ごしたい

 クリスマスイブの日。

 恋歌は出社した。

 今日明日と有給を取る同僚もいるがそれについてはなるべく考えないようにしている。別にわざわざ休みなんかなくても死にはしないのだ。

 私の作戦は終わっていない。

 この日のために大学時代の友人に片っ端から声をかけ、必要なものを手に入れた。ちょっとばかりサプライズになるがきっと村田は気に入ってくれるはず。

 恋歌は今日も始業前に女子トイレの洗面台の前に立ち、鏡の向こうの自分に微笑みかけた。

 うん。

 絶対に上手くいく。

「私、手段は選びませんよ」
「え? 何の話?」

 背後からひとみにたずねられ、恋歌はぎょっとする。

 クリぼっちな夜を約束された先輩がやけに縁起悪く思えてならないのだが、邪険にする訳にもいかず、恋歌はにこりとしてみせた。

「おはようございます♪ 先輩は今夜彼氏と二人きりのクリスマスパーティーなんですよね」

 うっ、とひとみが呻くがそれには気づかないふりをする。

 ひとみがやや顔を引きつらせて応じた。

「そ、そうよ。だから定時には帰らないとね」
「……」

 先輩、早く帰っても寂しいイブしか待ってませんよ。

「わあ、そうですよね。いいなぁ、先輩の彼氏紹介してくださいよ」
「こ、今度ね。今日はダメよ」
「……」

 先輩、いもしない彼氏をいつなら紹介できるんですか?