恋歌はクリスマスを彼と過ごしたい

 以前、先輩のひとみと村田がアニメおたくかどうかの議論をしたことがある。

 ひとみはおたくではないかと言ったが恋歌は認めなかった。恋歌の中では村田はおたくではなくマニアである。

 おたくとマニアの違いを明確に述べろと問われたら説明に困るがとにかく村田はマニアなのだ。

 恋歌はおたくが嫌いだった。

 なので村田おたく論は絶対に受け容れられなかった。

 たとえメール通知のアプリにアニメキャラが用いられようと、休日にアニメショップ巡りをしようと、自室に大量のアニメDVDがあろうと村田はマニアであっておたくではないのだ。

 うん。

 恋歌は頭を振ってショックから立ち直る。

 マニアなんだからこの反応は仕方ない。

 あとは自分の根気の問題だ。

 がんばれ私。

 恋歌はまたコホンとし、甘えた声で村田にすり寄る。

「休めないならせめて仕事帰りにどこか行きませんか」
「いや、俺に付き合っていたら何時になるかわからないよ」

 それはむしろ望むところ。

 夜のお付き合いになったら絶対に逃さないんだから。

「私、何時まででも待てますよ」
「いや、待たなくていいから」
「……」

 ちくり。

 この人は微塵も私のこと興味ないのかな。

 そんな思いが頭をよぎり、恋歌は胸に小さな痛みを感じる。

 ああ、もう何なのこの感覚は……。

 恋歌は自分の中で起きている変化に苛ついた。それが何なのか理解しようとしている別な自分を全力で阻む。それを知ってしまってはいけないと本能的にわかっていた。

 だから、恋歌は何回も自分に言い聞かせる。

 これは戦い。

 これは戦い。

 これは戦い。

 これは……。