ガラガラ、パタン。ガチャ。

俺は教室のドアを閉めて鍵を掛けた。

ザワ…。

出た…暴走現象…。

…。

一難あってまた一難…か。

ヒュウ!!

俺の頭上を机が通る。

あ、危ねぇ…。

天病が暴走する時はマジで怖い。

なんせ、周りの物が飛んでくるからな。

天病が俺の方に顔を向けた。

あー…ヤベェなぁ…。

目が真っ赤だわ…。

瞳孔も開いちゃってる。

そろそろ来るかな。


ダンッと天病が床を蹴って俺に向かってくる。

ナイフ、いや包丁か?

そんな刃物を持ちながら。

錫杖を構える。

ガンッ…。

くそ、机がぶつかってきたせいで天病が見えねぇ。

っ、背後か!!

振り向くと天病が狂った笑みのまま、
俺に刃物を向けていた。


「っ、天病、落ち着け。
俺と他の奴の区別がつかないのか?」


そう話しかけても無駄の様で、
天病は刃物を振り下ろした。

出来れば『ライクルブルズ』は使いたくない。

でもこの状況はキツイ…。

ガシッ!!

俺は天病の手を掴み押さえつけた。

ス、と俺の目の色が変わる。


「天病、大丈夫。俺だよ、敵じゃない。
だからその刃物を下ろして?」


無表情のままそう言った。

ピタリと天病の動きが止まった。

ガタ、ガタガタン!!

机や椅子が落ちる。

そして天病の目から涙が溢れでる。


「す、ちゃ…。」


そのままドサリと俺に倒れ込む。


「…危なかった。」


いや、実際はもうダメだった。

危ないという度を超していた。




























天病の刃物が俺の腹部に刺さっていたのだ。






























「あ、まび…。」


ぼやけていく視界に映ったのは
狂った笑みの天病だった。

































…。

此処はどこだ…。





何も無い…。

ただ真っ白な空間。






俺は…ああ、刺されたのか…。






誰に?






誰だ…此奴…。







赤い目の色をした狂った女…。






























…………天病!!


ガバッと起き上がる。


目の前の景色は保健室だった。



「はぁ、はぁ、…」



「…起きたのね紺珠ちゃん」



「セ、ンセ…。」



阿伎留先生が隣に座っていた。

どうやら俺は教室で倒れた頃から
約1日眠っていたらしい。

しかし、さすが阿伎留先生の薬だ。

もう治りかけてる。


「先生、天病は…。」


「貴女の隣で寝てるわ。」


「あ、ホントだ。よかった。」


「本当よ、貴女暴走状態の天病ちゃんを
丸腰で相手するなんて普通考えないわ。」


「す、すみません。」