「あ、が…いや、助け…!!」



俺は声にならない声を出してしゃがみ込んだ。



「紺珠ちゃん!!動いちゃダメって言ったでしょ?
ほら、中に入りましょう?」



阿伎留先生が俺に話しかけてるのにも関わらず、
俺の体は全く動かなかった。


立ち上がろうとしても何故か俺の体は動かない。


…もしかしてこれは…



「おやおや、何処かへ行かれては困ります。」



やはり挑発男だ。

だが何故だ?

あの血の量は明らかに致死量だぞ!?


俺はゆっくりと顔を上げると驚きの光景を目にした。



首から上がないにも関わらず胴体が動いていたのだ。



コロン…。


俺の膝に何かがぶつかった。


更に驚いた。


ぶつかってきたソレは挑発男の頭だったからだ。



「あ、阿伎留先生逃げて下さい…。」


「それは無理ね。」



阿伎留先生を見ると
阿伎留先生も体が動かなかった様だった。


俺はすぐにいつもの俺に戻った。


「へぇ、成る程な。
生きる事を数分キャンセルしたのか?」


「ふふ流石です紺珠さん?」


「アンタに名前を呼ばれんの屈辱だから呼ぶなよ。」


「おやこの状況でもそんな事が言えるんですねぇ。」


「だってアンタ、弱いし?」


「…少し黙っていなさい糞ガキが。」



お、奴の地雷踏んだか?

少しキレてる。

こーゆー時って『ライクルブルズ』
にも影響があるんだよな。

だから体の呪縛が解けかけてる。

これなら力尽くで…ほら解けた。

俺はゆっくりと立ち上がる。



「あらあら結構気が乱れてるな。」



少し嘲笑いながら俺は長髪男を挑発する。

再び地雷を踏んだようで
周りの気が締め付けるように重くなった。

そして俺は長髪男に見えない様に
後ろで錫杖を構える。

シャラン、と錫杖が鳴り、
長髪男に振りかざそうとした。



…しかし俺の腕は動かなかった。


「…ッ!?貴様!!」


「私に言われても。それ私のせいじゃないですし。」


「は?どう考えてもお前だろう。」


「違いますよ?後ろを振り返って見なさい。」



クルリと、俺は頭だけ少し振り返った。

するとよくわからん二人組が歩いてきた。

その時俺の本能が『逃げろ』と言ったのだ。


俺は体を無理矢理動かして阿伎留先生を担いだ。

更に保健室のベッドで寝ている天病を担いだ。

その後は廊下を猛ダッシュ。

彼奴らに追いつかれない様に本気で走った。



「あれ?どうしたの?紺珠さん。」



「っ、弧奇墨!?』



たまたま弧奇墨と出くわした。

いやそれより此奴も危ない。



「弧奇墨、職員室まで
阿伎留先生と天病連れて走ってくれ。
事情は阿伎留先生から聞いて。頼んだぞ!!」


「え、ええ…。」



俺は弧奇墨に2人を任せて来た道を戻る。

…よし、気づいてないな。

取り敢えず俺が囮になるか?

いやしかしその後は何処に逃げる?

此処は学園内だから
何処に行っても誰かに影響が及ぶ。

弧奇墨が戻ってくるまで待つか?

いや、それも駄目だな。

戻ってくるまで此奴らが
此処にずっといるとは限らない。

なら、戦う?

いや、俺だけで勝てる相手じゃない。

それに長髪男が俺の能力をバラしているだろう。

それに…。

長髪男はともかく、後ろにいた2人…
校長よりも実力があると見ていいだろう。

…どうするか…。



























「おやおや、こんな所に居ましたか紺珠さん?」