「おい、そこのお前。」


「…何ですか…?」


「紺珠 鈴薙だな?俺と来ないか?」


「お断りします。それにこれから用事があるので。」


「まぁ、そう言うなよ。『ライクル・ブルズーポリスウィーズン』なぁ、俺と組もうぜ?」


「…はあ、『ライクル・ブルズーノーボォ』始め。」


「その能力は俺には聞かないぜ?」


「俺は彼の言うことには耳を傾けなかった。
口説きだなんて、たらしの能力だからだ。
さてと、どうしようかな。
俺は本とペンを持って彼の前に立った。
そして、彼はそれを見た途端、そそくさと逃げ帰り
戻ってこなかった。結び。」



俺が本から顔を上げると、男性は逃げて行った。

俺は勝ち誇った笑みを浮かべて本を閉じた。


「残念。俺の勝ちだね。」


この世界は『ライクル・ブルズ』によって歪んだ。

『ライクル・ブルズ』は人の特技に反応して

初めて発動する。


と、世の中ではされているが、

実際は人生を変える特技と

辛い過去で発動するんだ。


つまり『ライクル・ブルズ』を持っている人達は

トラウマ持ちってことだ。


俺もその中の一人だ。

あ、自己紹介が遅れた。

俺は紺珠 鈴薙(カンジュスズナ)。

好師園学園、中等部3年二組。

俺の通う此処は中高一貫校。

そして『ライクル・ブルズ』を持つ人々が

通う学校だ。


「あ、今の人の『ライクル・ブルズ』回収しておくんだった。」


今の授業は『ライクル・ブルズ』を悪用する

人々からの『ライクル・ブルズ』を回収

するっていう授業。



「う〜んどうしよう。俺の『ライクル・ブルズ』は
捜査能力じゃないからなー。」


「あっれれ〜?もしかして〜俺を本気で
追っ払えたとでも思ったのかな〜?」


「…チッ。まぁべつにいいや。
探す手間が省けたし…。」


「ハハ、随分と余裕だね。
残念だけど俺に返事を返した時点で君は
もう捕まってるも同然なんだよ。」


「…そういえばあなたの能力は
相手に好きな人や恋人が居れば無効、
でしたよね。」


「そうだけど?…まさか。」


「そのまさかですよ。
『ライクル・ブルズーノーボォ』始め!!」


「チッ!」

























数分後…。


「…よし、完了っと。」


俺の前にはグッタリとしている
先ほどの男性が縛られている。

そして俺の手の中には
淡い紫色のリップが乗っている。

これがきっと彼の『ライクル・ブルズ』だろう。


「…悪用しなければこんなことしなくて済むのに。」


俺は小さくそんな事を呟いた。

でもそんな事を考えていても世界は変わらない。

リップ型の『ライクル・ブルズ』を
特製の容れ物に入れて鞄にしまう。


「さてと…。戻るか!」


元気良く言ってみたものの、
特に元気は出なかった。

軽くため息をついて俺は
学園への道を急いだ。