「姫乃さん、部活とか入るつもりなかったんでしょう? 本当にごめんね」
「あっ、いえ!」
部活に向かって歩き出すと、隣を歩く上山先輩が申し訳なさそうに謝ってきて、あたしは慌てて首を横に振った。
「最初はね、普通にマネージャー募集する予定だったんだけど、全くの初心者より経験者の方が教えるのも楽だろうから……って、部長が言ってくれて」
「姫乃さんには申し訳ないけど、来てくれて助かった」と、上山先輩は微笑む。
昨日まではどうしようか悩んでいたけれど、こうして感謝されると引き受けて良かったと思った。
上山先輩もとても良い人そうだし、あたしなんかが少しでも役に立てるなら……。
「あの、お母さんは大丈夫なんですか?」
「うん。子宮筋腫で、命に関わるようなものじゃないから。ただ手術しちゃうし、家のこともあるから、その間ちょっと部活は休ませてもらうんだけど……」
「大丈夫なら良かったです! マネージャーのことは任せて下さい」
上山先輩の前に出て、張り切ったあたしが言うと、「ありがとう」と笑って返事してくれた。