無造作ヘアな黒い髪、制服はきちんと青いネクタイもしているし、校則に違反することなく普通に着こなされている。
顔は決して悪くはないけれど、飛び抜けてカッコイイこともなく、目立つような存在ではない。
最近席替えで隣になって、やっと名前を覚えた……っていうくらい、普通すぎて印象に残っていなかった。
それはたぶん、あたしも。
特別かわいいわけじゃないし、目立たない。
それなのに……。
「……の、姫乃!」
「えっ?」
急に怒鳴るように名前を呼ばれて、ハッと前を見る。
すると、周りのクラスメート達はみんな立ち上がっていて、クスクスとあたしを見ながら笑っていた。
そして、
「起立!」
「はっ、はいっ……!!」
先生の声に慌てて立ち上がって礼をすると、隣の結城くんも声を殺して笑っていた。
は、恥ずかしい……。ていうか、あなたのせいでこうなったんだけど……。
告白をしてきた結城くんよりも、きっとあたしの方が動揺している。
顔を真っ赤に染めながら、授業の始まりの号令を終えたあたしは、ぺたんと力なく再び腰を下ろした。



