「すみませーん!」と言いながら、駆け寄ってくる小学5、6年生くらいの男の子。
結城くんが立ち上がり、ボールを蹴り返そうとすると、
「あっ、のぞむ兄ちゃんじゃん!!」
更に後ろから追いかけてきた男の子が、結城くんに向かって声を上げた。
のぞむ兄ちゃん……?
「おぉ、大翔(ひろと)じゃん! 久しぶり!」
「大きくなったなぁ」と、目の前まで寄ってきた男の子の頭を撫でる結城くん。
「知り合い……?」
あたしが首を傾げて聞くと、
「ああ、母さんの友達の子で、小さい頃からよく知ってて……」
「ねぇのぞむ兄ちゃん、サッカー教えてよ!」
結城くんが答え終わらないうちに、大翔くんが腕を引っ張る。
「え、あぁ、でも……」
「あたしは大丈夫だから、サッカー教えてあげて!」
「ごめん、じゃあちょっとだけ」
遠慮がちにあたしを見た結城くんに笑顔で答えると、手を引かれるまま結城くんは、男の子達の輪の中に入っていった。
そして、ドリブルを始める結城くんの姿に、ドキンドキンと胸が高鳴る。
あたしのことをずっと前から想ってくれていた人がいる。
何だか不思議で……嬉しくて。
結城くんのくれた言葉を、頭の中で何度も繰り返していた。