「だって、彼氏欲しいんだもん。いいよね、茜ちゃんは素敵な彼氏がいてー」

ぷうっと、あたしは頰を膨らませる。


何を隠そう、茜ちゃんには他校に彼氏がいる。それも、中学卒業の日にずっと好きだった人に告白されて付き合い始めた……っていう、羨ましすぎる展開だ。

すぐ目の前に、そんな少女漫画みたいな恋愛をしている人がいるっていうのに、あたしは……。

自分の状況に失望するばかりで「はぁ」と、大きなため息をついていると、


「ねぇ、どうしてそんなに彼氏が欲しいの?」


茜ちゃんは不思議そうな顔をして、あたしに聞いてきた。


どうして彼氏が欲しいのか……なんて、そんなの決まってる。


「夢だったんだ。放課後にデートしたり、友達とノロケ話したりするの」


それはまだ、あたしが中学生の頃。

気付けば周りの友達に、ちらほらと彼氏が出来始め、みんな楽しそうで、嬉しそうで、キラキラしていた。

幸せのかたまりみたいな笑顔を振りまいていて、すごく輝いて見えたんだ。

……だから。