「す、すみませんっ……!」
「ううん、全然ー。元はと言えば私がひとりでやる予定だったのに、付き合わせちゃってごめんね」
「いえ、そんな!」
「ほら、早く終わらせて帰ろ。 結城くん待ってるんじゃない?」
「や、だから……!!」
詳しい事情を知らない上山先輩は、またからかうように笑う。
望くんとあたしはもう恋人関係じゃなくて、しばらく一緒には帰っていない。
だから待ってくれているなんて、確証はない……けど。
今から2時間近く前、自分の身に起こったことを思い出して、胸の奥から熱くなる。
保健室であたし……望くんとキスをした。
時間にすれば数秒。だけどその時間は、今までの人生の中で、とてつもなく濃いかった。
望くんの唇は思っていたより柔らかくて、温かくて、あたしの腕を掴んだ手は……微かに震えていた。
今でも鮮明に覚えている感触。
さっきから……いや、保健室からグラウンドに戻ってきてから、ずっとボーッとしているのは、望くんとのキスのせい。



