「あの時も、テーピングぐちゃぐちゃになってた」
「えっ、あっ!? これはっ……!」
少し良い感じの雰囲気から一転。
望くんの言葉に手元を見ると、途中で手を止めてしまったせいで、テーピングの意味がないくらい、緩く変な巻きつけ方をしてしまっていた。
「ごめん! 今すぐやり直すからっ……!」
あたしは慌てて、望くんの足に巻いたテープを解こうとする……だけど、
「……っ!!」
目の前には望くんの顔。
急に手首を掴まれ、気付けばそのまま引き寄せられていた。
「菜子のこと諦めようと思ってたのに、そんな可愛い顔ばっかされたら、諦められなくなる」
真っ直ぐあたしを見つめる強い瞳に、息を飲む。
「望く」
「ごめん。菜子……目、閉じて」
あたしの言葉を遮って、ゆっくりと近付いてくる望くん。
待って、意味が分からない。
ううん、分かっているけど……分かっているけど、分からない。
ドクンドクンと、自分の鼓動の音がうるさい。
耳に響いてうるさくて、顔が、身体が一瞬にして熱くなって。
あたしはギュッと目を閉じた。
ふわりと優しく重なる、柔らかな感触。
──ねぇ望くん、このキスはどういう意味……?