「荷物持ってきたけど……って、大丈夫?」
「……あっ、うん! ありがとう……」
ボーッとしていたあたしはハッとして、お礼を言う。
びっくりした、まさか望くんが来るなんて思わなかった。
荷物を持って来るとは言っていたけど、茜ちゃんにでも頼んでくるんだと思っていた。
……ううん、それよりも。
今、『菜子』って呼んでくれたよね……?
もう名前では呼んでくれないと思っていた。
今後はきっと『姫乃』って、苗字で呼ばれるんだと。
でも、付き合っていた頃と同じく『菜子』って呼んでくれた……それだけのことがたまらなく嬉しくて、涙が出そうになる。
知らなかったな。呼び方ひとつでこんなにも感情が動かされるなんて。
「……あの、さ」
ここで泣くわけにはいかなくて、あたしが必死に堪えていると、望くんが口を開いた。
ふたりっきりの保健室。望くんは一度あたしを見て、バツの悪い顔をして目を逸らすと、
「昨日は……ごめん。言い方、すごい悪かった」
申し訳なさそうに告げた言葉は、ハッキリとあたしの耳に届いた。



