目の前には結城くん、ただひとり。
急にふたりっきりになって、ドキドキする。
恥ずかしいっていうか、照れるっていうか、なんていうか……。
「えっ、と……おはよう」
「はよ……ってゆーか、どこ行くの?」
「え?」
「どこか行こうとしてたんだろ?」
結城くんに不思議そうに小さく首を傾げられて、ハッとする。
階段を降りて、教室とは逆方向に進んでいたあたし。何故かって言ったら、それは……。
「実は、サッカー部の練習を見に行こうとしてたの……」
「は?」
はにかみながら言ったあたしに、結城くんは眉をひそめて返事した。
あれ?やっぱり、迷惑だった……?
思いがけず不機嫌そうな顔を向けられ、どうしよう……と、内心焦るけど、
「なんで?」
間髪入れずに問いかけてくる結城くん。
上手い言い訳を考える余裕もなかった。
「結城くんに会いに行こうと、思いまして……」
語尾につれ、小さくなる声。
すぐに「嫌だったよね、ごめんね」って声をかけるつもりだった……けれど。



