さっき歩いて来たばかりの廊下を引き返して、階段を降りる。
結城くんびっくりするかな?……て、いうより、確認もなくいきなり行ったりしたら迷惑かな?
今更だけど、ふと不安になってきて、歩く速度を落とす。
そもそも、どんな感じで声をかけたらいいんだろう?
彼女になってまだ1日。
昨日までろくに話したこともなくて、決して仲が良いとも言えなくて、どう接したらいいのかわからない。
……やっぱり、やめておこうかな。
なんて、階段の手すりに手をかけて、思った時だった。
「あれ? 姫乃さん?」
聞こえてきた自分の名前に、顔をパッと上げると、真正面から階段を登ってきていたのは中村くんと……結城くん。
「えっ……」
思わぬところで出くわして、結城くんと目が合ったあたしはドキッとして声を上げる。
「あ、もしかしてコイツのお出迎え?」
そんなあたしを見た中村くんは、軽く冷やかすようにニッと笑ってそう言うと、
「じゃあ、俺は先に行くわ」
ポンっと結城くんの肩を叩いて、軽快な足取りであたしの横を通り過ぎ、階段を登っていった。



