「ほら、今のうちに結城くんにおめでとうって言っておいで」
隼人先輩が遠ざかったのを確認して、上山先輩が肩をぶつけて小さく告げた。
「へっ!?」とあたしは、思わず変な声を上げる。すると上山先輩は、「ふふふ」と満足気な笑顔を浮かべて「じゃあまた後でね」と、踵を返した。
……そういうことか。
だから上山先輩は、あたしにスコア取るように言ったんだ。
少しでも望くんと話せるように。
上山先輩はあたしがフラれたことを知らないから、仕方ない。
だけど、さっきあんなことまであって、あたしが『おめでとう』なんて、言えるわけ……。
「……」
ふと顔を上げて目の前を見ると、望くんの姿が目に映った。
中村くん達と笑いながら、きっと喜びを分かち合っている望くん。
……言っちゃ、だめかな。
おめでとうって、言ったらだめかな。
心の奥では言いたい、伝えたい。
だってあたしは望くんが頑張ってきたのを知ってる。
部活が終わってからも中村くん達に教わって、努力してきたのを見てきた。
だから……『良かったね』って、言いたいよ。



