「ねぇねぇ、姫乃さん〜! 実際のところ、どっちが本命!?」
「えっ」
部活が始まる少し前。ジャージに着替えてグラウンドに出てきたあたしを、待ってましたとばかりに取り囲んできたのは、2年生の先輩方。
「な、何の話ですか……?」
意味が分からないのと、ニタニタと笑う先輩達に嫌な予感がして、あたしは愛想笑いを浮かべながら一歩後ずさる。すると、
「実は昨日見ちゃったんだよね。姫乃さんと部長が部室にいるとこ! 俺らてっきり結城と付き合ってると思ってたんだけど、部長だったの?」
鼻息荒く聞いてきた先輩に、「え……」と小さく声を漏らした。
「部長とは中学から一緒なんだっけ? その頃からずっと好きでしたーとか?」
「うわ、マジそんな後輩羨ましすぎなんだけど!」
あたしはまだ何も言っていないのに、勝手に盛り上がる先輩達。
いや、待って……。
「ちっ、違いま……」
「女の子囲んで何やってんすかー?」
あたしが何とか声を上げようとしたその瞬間。
先輩達をかきわけて、そう声をかけてきてくれたのは中村くん。
状況を分かってくれそうな人の登場に、ホッとした……のもつかの間。
中村くんの斜め後ろに立っていた人の姿に、あたしはピタッと凍りつく。



