「隼人先輩の用事って、このことだけ……ですか?」
明日からの部活の話であれば、急ぐ必要もなく、スマホからの連絡でも良かったはず。
先輩はこのことだけのために、わざわざ教室まで来てくれたの……?
あたしが心の中で疑問に思ったことは、先輩に伝わっていたみたいで。
「うん、部活のことと……久しぶりにひめちゃんの顔が見たくなって」
にっこり、笑顔を浮かべ真っ直ぐ言われた言葉に、思わずドキンと鼓動が跳ねる。
でも、同時にきゅっと、苦しくなる胸の奥。
「じゃあ、また」と、いつもの調子で軽く手を挙げ踵を返そうとした先輩を、
「あっ、あの、隼人先輩……!」
あたしは慌てて呼び止めていた。
自分からこんなことを伝えるのは、どうなんだろう。
でも、自分の気持ちに気付いてしまった以上、このままじゃいけない。
望くんとはああなってしまったけど、あたしは……。
震えそうな指先を、ぎゅっと握る。
「あの、あたしも少しお話したいことがあるんですけど、お時間いいですか……?」
意を決して口にすると、先輩は少し驚いた顔をしてすぐに、
「いいよ。じゃあ、ちょっと場所かえよっか」
いつもと変わらぬ笑顔で、そう返事してくれた。



