「……なんか、菜子らしくないね」
「え?」
「菜子って後先考えず、もっとガンガンいく性格だと思ってた」
「ガンガンって……」
傷心中の友達になんてことを言うんだ……と、思いながらふと気付く。
いや、確かにあたしって、茜ちゃんの言う通りだったかもしれない。
今考えてみれば勝算なんてなかったのに、なぜか自信満々に隼人先輩に告白なんかしちゃってたし……。
思い当たる節に黙り込むあたしに、「ほら」と茜ちゃん。
「あ、あの時は……」
とにかく彼氏が欲しくて突っ走っていたけど、今は違う。
別人みたいに慎重になってしまう理由は既に明白で、恥ずかしさに赤くなりながらも伝えようとした……時だった。
「今日のホームルームで、席替えするってー!」
ビックニュースとばかりに、そう言いながら教室へ飛び込んできた、クラスメートの男子。
「え、マジ?」
「マジマジ! 今プリント出しに行ったら、席替えするからって先生に言われて!」
「えー、やった!」
「うわー、ドキドキする」
彼を取り囲んで、話はあっという間に広がる。
席替え……。
そろそろじゃないかと、思ってはいたけど……
「菜子……」
心配そうに茜ちゃんが名前を呼ぶ。
あたしは隣の席を見つめて、下唇をきゅっと噛んだ。