「今日は朝練なかったんだ?」

「うん、テスト期間だから放課後もないよ」


あたしが答えると、茜ちゃんは思い出したように「あ、そっか」と口をついた。そして、


「結城くんは……来てるんだ」


あたしの隣の席に、荷物があるのを見て呟いた。


「何か話した?」

「ううん。挨拶とかする前に避けられちゃった」


もっとも自分から挨拶なんて、出来なかったかもしれないけれど。

あははと苦笑しながら返事すると、茜ちゃんの方が悲しそうな顔をした。


「好きだって、 言わないの?」


真面目な顔をして問いかける茜ちゃんは、全てのことを知っている。

望くんにフラれてしまったことも、やっと気付いた自分の気持ちも……。


好きだって、出来るなら伝えたい。

でも……。


「距離置こうって言われちゃったから……」


きっと今、あたしが好きだと告白してもダメだと思う。

望くんはきっと……信じてくれない。


それに、あたしも怖い。

好きだって告白して、それでも『ごめん』って言われたら、あたし達はもう本当に……。