「茜ちゃんと会ってたんだよ?」
嘘はついていない。それなのにドクンドクンと、鼓動が大きく嫌な打ち方をする。
「望くん……」
目を合わせてくれない彼に、どうしようもない不安が襲ってきて、あたしが一歩近付こうとすると、
「っ……!!」
腕をグイッと強く引かれ、次の瞬間……抱きしめられていた。
Tシャツから香る柔軟剤のやわらかな匂いとは真逆に、あたしの身体に回された腕の力はとても強い。
「ごめん。毎回毎回、ほんとダサいよな……」
すぐ耳元で聞こえた言葉に、胸の奥までギュッと苦しくなる。
違う……。
望くんはダサくなんかない。
あたしが悪いんだ、あたしが……。
「菜子のこと信じようって思っても、西川先輩と話してんの見るだけで余裕なくなって……周りが見えなくなる。だから……」
その先の言葉を予測する間もなかった。
きつく抱きしめられていた身体は、そっと離されて。
「……俺たち距離置こう」
静かに告げられた言葉に、頭の中が真っ白になった。
距離を置く……?
それって……。
「どういう、こと……?」
問いかける声が震える。声だけじゃない、重力のままにぶら下げた両手の指先も震えてる。
どうか冗談だよって言って欲しい。
それか、数日間連絡を控えるくらいのものだよ……って。



