「菜子、おはよ!」
翌朝、学校の下駄箱に手をかけたところで、後ろから声をかけられた。
聞き慣れた声に振り返ってみれば、思った通り茜ちゃん。
「お、おはよ……」
昨日のお説教の続き、されちゃうかな……。
そう思ったあたしは身構えるけど、意外にも茜ちゃんは何もなかったかのように、下駄箱の上履きへと手を伸ばす。
あれ、何も言ってこない……て、いうか。
あたしの横で上履きへと履き替える茜ちゃんからは、ふんふんと鼻歌さえ聞こえてくる。
「何か良いことでもあった?」
「あ、わかる?」
……そんなにあからさまだと、さすがに。
こくんと頷いたあたしに、茜ちゃんは「実はね……」と、含みをもたせてから、
「来月の記念日、ランドに行くことになったんだ!」
滅多に見ることのないキラキラの笑顔で、嬉しそうにそう言った。