『好き』より先に、キミの『彼女』になりました。


「お待たせ」


ゆっくりと近付いていってあたしが声をかけると、望くんはスマホに向けていた顔を上げ、ポケットへとスマホを突っ込んだ。


「一緒に帰って大丈夫? 家の用事は……」

「今日は遅くなるって言ってあるから大丈夫」

「そ、そうなんだね……」


望くんの態度に、特に変わった様子はない。
だけど、『今日は』という言葉があたしにはやけに強調されて聞こえて、ドクンと鼓動が跳ねた。


「それじゃあ……」


「帰ろっか」と、とりあえず笑顔を浮かべて、あたしが言おうとした……その時、誰かが歩いてくる気配を感じて、望くんの視線がそっちに動いた。

あたしもつられるように振り返る……と、


──隼人先輩。


昼間とは逆の鉢合わせ。

いや、部活が終わったばかりで、校門はこっちの方だから、先輩が歩いてくることは何もおかしくないけれど……。


どんな顔をしたらいいか分からず、あたしが思わず俯くと、


「行こう」

「っ……」


ひと言呟いた望くんは、先輩に一度会釈して、歩き出した。


その瞬間、あたしの息が止まりそうになったのは……望くんがギュッと手を握ったから。