「え……」
柔らかく微笑んだ先輩に、ドクンと鼓動が大きく跳ねる。
他に好きな子が出来たっていうのは本当……?
「それって……」
誰のことを言っているのか、戸惑いながらも問いかけようとした瞬間だった。
「私、先に帰るね」
クシャッとクレープの袋を握りつぶした音と同時に、聞こえた声。
パッと隣を見ると、茜ちゃんは既に立ち上がって背を向けていた。
「あっ、茜ちゃん!?」
あたしを置いて歩き出した茜ちゃんを慌てて呼ぶけど、振り返ってはくれない。
「先輩、すみません」
「いや、俺の方こそ友達と一緒だったのにごめん」
素早くカバンを肩に下げたあたしは、隼人先輩にペコッと頭を下げて、茜ちゃんを追いかけた。
理由はハッキリとは分からないけど、茜ちゃんが何か怒っていることは、態度から見て取れる。
茜ちゃんをほったらかしにして、先輩と話してしまっていたから?
それとも……。
「待って! 茜ちゃん!どうしたの?」
走って追いかけ茜ちゃんの腕を掴むと、茜ちゃんはやっと足を止めて、振り返った。そして……。



