何も考えず、声に出して呼んでしまった。すると、その声が届いてしまったのか、先輩が一瞬こっちを見て──。
やばっ……!!
焦ったあたしは、パッと顔を元に戻した。
「ねぇ、聞いてる? 私、やっばり隼人じゃなきゃダメなの。あんなの全部遊びで……」
「悪いけど、もう無理だって言ってんじゃん」
次第に近く、鮮明になる先輩達の話声。
チラチラ聞こえてくる内容に、あの人は先輩の元カノで、もしかして浮気してたんだろうか……なんて、嫌でも邪推してしまう。
とにかく、気まずい。
早く通り過ぎていってくれないかなって、思っていると──。
「ひめちゃん、お待たせ」
「ひえっ!」
ポンと肩を叩かれ、かけられた声にビクッとしたあたしは振り返る。すると、ニコッといつもの笑顔を浮かべるのは、他でもない隼人先輩で。
「え、誰? その子」
先輩の後をついてきた女の子は、あたしの姿をまじまじと見ながら聞いてきた。



