「結城くん、良かったら今日一緒に帰ろう?」


あたしは少し照れつつも、笑顔を浮かべて誘ってみた。

彼氏が出来たらやってみたかったことのひとつ。


それは、放課後に一緒に並んで帰ること。


いよいよ今日、その夢が叶うんだぁ……なんて、ヘラヘラしながら待っていたのに、


「あぁ……ごめん、無理」


あ、そうだよね無理……って、無理!?

聞こえた返事は予想外で、頭に小石でも投げつけられたように、パチパチと瞬きをする。


「な、なんで……」


まさか断られるとは思っていなくて、理由を訊ねようとしたその時だった。


「結城〜」


ひとりの男子が結城くんの名前を呼びながら、こっちへと近付いてきた。


一際目立つ茶髪に、整った顔。

入学初日からひそひそとカッコイイと噂されていたその人は、サッカー部の中村くん。


不意に目が合って、ニコッと笑顔を向けられ、思わずドキッとしていると、


「今日ってミーティングあるんだっけ?」

「いや、今日は確かなかったと思うけど……」


結城くんと中村くんは、あたしにはよく分からない会話を始めた。