「え、だって足のこと心配してくれたから……」
「……」
あたしがすぐさま答えると、望くんは少しバツの悪そうな、面白くなさそうな顔をして、フイッと背を向けた。
そして、スタスタと先に化学室へと歩いていく。
よく分からないけど、怒らせてしまったのかな……なんて考えながら、その後ろ姿を見つめていると、
「一体どうなってんのよ」
いつの間にか隣に立った茜ちゃんが、そう聞いてきた。
「どうなってる……って、言われましても」
あたしだって、実際のところよく分からない。
あの日、望くんの前で隼人先輩に気になってると言われ、『渡しません』と告げた望くんに、『それはひめちゃんが決めることだよね?』と、先輩が返事した。
それから何故か、あたしを奪い合う……みたいなことになっていて。
今みたいに隼人先輩は、あたしを見つけると寄ってきて、それに気付いた望くんが引き剥がしにくる……というのが、あの日から何度も続いている。