「菜子のこと、先輩は何とも思ってないんですよね?」


……え?

間髪入れずに続けられた質問の意味を、すぐには理解出来なくて、あたしは目を丸くする。

目の前の先輩は、思った通りキョトンとしていた。


「ちょっ、望くん! 何言ってんのっ!?」


何とも思ってないかとか、そんなの聞かなくても分かること……!

顔を真っ赤にして、望くんに向かうあたしの横から、


「望が正直にって言うなら言わせてもらう」


隼人先輩の静かな声。

まさか、同じ人に二度もフラれるなんて思わなくて、恥ずかしさに目を瞑る。


「実は、ひめちゃんのこと気になってる」


ほら、やっぱり……って、


「……え?」


あたし達3人以外、誰もいない部室。

先輩の言葉は充分すぎるほどハッキリと、あたしの耳にも届いた。……だけど。


実は気になってる……?


頭の中で反芻させてみても、今いちピンと来ない。


……うん、聞き間違えだ。絶対聞き間違え。

そう確信して先輩の方へと向き直ると、


「わざわざ聞いてきたってことは、ひめちゃんのこと狙っていってもいいってこと?」


隼人先輩はニッコリと笑って、望くんに尋ねていた。